sumiikasumiの日記

とりあえず始めたところです

墨烏賊墨の株式日記~米運輸安全委がテスラに不満、死亡事故調査情報の先行開示巡り @Bloomberg

引き続き技術的な側面をフォロー/補足して参りましょう、

表題はBloombergから(↓)。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-04-01/P6J02S6S972801
(Bloomberg、「米運輸安全委がテスラに不満、死亡事故調査情報の先行開示巡り、2018/04/02/07:18JST)

>>  NTSBのクリストファー・オニール報道官は1日、「テスラが調査情報を公開したことにNTSBは不満だ」と述べ、死亡した運転手が自動運転支援機能「オートパイロットについて過去に示していた懸念を含め、NTSBはこの衝突事故をあらゆる側面から調べている」と説明した。NTSBは予備的な報告書を数週間以内に公表する計画。

《コメント》
・ NTSBの嫌味か。当時者が一方的に情報を発するのは、その内容が結果的に概ね正しければ、許容されるけれど、今時点では性急と言えるでしょう。

・ 逆に言えば、財務・製造の両面で状況的に厳しさがある中でTesla側としては、自動運転に関する風評の遮断を試みるというのは、背に腹は変えられない措置か。モデルSの大量リコールにせよ、運転事故の状況報告にせよ、発表をマーケットの休場の時間帯に合わせてくるのには、まずは市場心理の鎮静化を図ろう/動揺を避けたいという意思が働いていると観てよい。

・ NTSBから発せられているメッセージとしては、「死亡した運転手が過去に示していた自動運転支援機能に対する懸念」が注目の箇所。

・ 前稿では操舵権の授受により自動運転モードが解除されてしまう場合について言及したが、Teslaの状況報告にせよNTSBの指摘にせよ、自動運転モードが継続する中での事故の発生を強く示唆し、特にNTSBは、今回の事故が必ずしも偶発的ではないという可能性について示唆している。(平たく言えば、なぜ、自動運転に失敗したのか? が真正面から問われつつある。)

・ なかなか興味深い。なぜならば、操舵権の授受による自動運転モードの解除ではなく、継続中の自動運転モードで発生した事故であるという場合、それは昨年モデルSで発生した消防車への衝突事故とその内容/原因を強く想起させるからである(↓)。(注記として、昨年の事故と今回の事故とでは車種が異なる。)

https://wired.jp/2018/01/26/tesla-autopilot-why-crash/
(Wired、「テスラの半自動運転は、なぜ消防車への追突事故を起こしたのか~見えてきた自動運転技術の課題と限界」、2018/01/26/FRI11:30)

《コメント》
・ 興味深いので本文の通読を奨めるが、ポイントとなるのは、a)「制止する物体を無視する設計」にあるというところである、b) また、それは欠陥のように見えるが、自動運転を実現する上での必要な機能でもあり一長一短がある、というところである。

・ 今回の事故と比較・対照し得る箇所を引用すると ここ(↓)となる。

>> つまりボルボ車は、目の前に急に現れた停止車両を避けるためブレーキをかけないかもしれないのである。むしろ、それに向かって加速する可能性すらある。これはアダプティブクルーズコントロール(ACC=先行車に追随して車間距離を保つ定速走行機能)や衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ機能)が備わっている、あらゆるクルマについても同じことが言える。

《コメント》
・ 「制止する物体を無視する設計」はTesla車に限らない。(通常はそれで大きな利得を得るが、たまに欠点が出る。) (持続的に運動を追跡・捕捉している対象物群以外の対象物が苦手。)

・ つまり、マイ理解では、修繕途中の中央分離帯を、路上停止していた消防車と同様にそこにないものと誤認知した可能性があるとなる。また対象物がないと認知された場合、むしろ車両が加速することがあるという仕様は、ドライバーの生前の指摘(↓)と重なり合ってくる。

https://www.google.co.jp/amp/news.livedoor.com/lite/article_detail_amp/14516011/
(Iphoneマニア/livedoor、「自動運転中のTeslaで事故死したAppleの技術者、ソフトの問題を指摘していた」、2018/04/01/11:51)

>> 地元メディアABC7Newsがホワン氏の家族の証言として、「ホワン氏は、Autopilotがいつも同じ分離帯に近づいていくと不満を語り、ソフトウェア上の問題を指摘していた」、と報じています。

・ なお、上記Wiredの記事中で、もう一点興味深いのは、この箇所(↓)である。

>> 長期的な解決策になるのは、異なる能力をもったより高性能な複数のセンサーを組み合わせることだろう。そのなかでも鍵を握るのはLiDAR(ライダー)である。

《コメント》
・ 「制止する物体を無視する設計」の欠点は、長期的にはLiDARで補完できるだろう、と言っている。

・ 同時に、Teslaの自動運転ではLiDARを使用しない方針にある/設計にある、と指摘していて、この点は、自動運転のコンセプト(無視する設計)が各社似通っている中での、Teslaと他社との大きな差異に相当する。

・ なお、同時期に死亡事故が発生したUberではLiDARを採用しているが、その後の原因究明で、必要量のLiDARの搭載を省略していた問題が浮上している模様。

続く。

ーーーーーーーーーーーー

以下、関連情報の追記。

件(くだん)のTeslaによる状況報告のアップデート(↓)。

https://www.tesla.com/jp/blog/update-last-week’s-accident
(Tesla、「先週の事故に関するアップデート」、テスラチーム、2018/03/30)

《コメント》
・ 経済的に合理的な主張になっている。かなりアグリー。ただし、一部の「ゼロリスク思想」の信奉者には理解してもらえないでしょう。

・ 科学的に合理的か?と言えば、一面でかなり合理的であるが、事故率が低いということは、事故の原因究明という観点では、直接的な説明になっていない。

・ 成熟した技術であれば、統計的に有意に安全でよい、となるが、自動運転の「レベル3」の段階での発展途上にあるのだから(↓)、問題や課題があって全くおかしくなく、むしろ事故の原因を精査していけば、もっと有意な安全に達する契機となる。

https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2017_0613.html
(NHK、「ホンダ、完全自動運転の壁」、2017/06/13)

ーーーーーーーーーーーー