sumiikasumiの日記

とりあえず始めたところです

梟通信~ギリシャ神話から読み解くエイリアン:コヴェナント

まったりと楽しみながら参りましょう、

ギリシャ神話から読み解くエイリアン:コヴェナント。

http://top.tsite.jp/news/cinema/i/37023586/
(Tsite、「初登場1位!エイリアン:コヴェナントとプロメテウス、“空白の10年”の映像が到着!」、2017/09/22)

先ずはそこそこの集客のようでホッと(*´∀`)

・・・

本稿では、ギリシャ神話》から、本作「エイリアン:コヴェナント」の主題と構造を読み解くことを試みてみましょう。

例えば、

上記のTsiteのヘッドラインでは、二つの作品の間を繋ぐプロモーションビデオが公開され、「空白の10年を埋める」とあるけれど、

【問】 なぜ、空白の10年なのだろう?

【答】 二つの作品での作品内時間が10年経過しているからであるけれど、空白の期間の出来事が、ギリシャ神話での《ティタノマキア》になぞらえられるとすると、ティタノマキア(=オリュンポス神とティタン神族)の戦いが丁度10年なので、空白の10年となる。

そうした推測が適切であるかどうかは、

本作「エイリアン:コヴェナント」の主題と構造が、《ギリシャ神話》を模しているという推測/作業仮説が妥当であるなら言えるので、

以下にそれを記しておきましょう。

・・・

《作業仮説》
・ 「プロメテウス」に始まる新3部作では、ギリシャ神話でのオリュンポス12神誕生以前の、ウラノス→クロノス→ゼウスに至る《王殺し/父殺し》の系譜を模写している。

・ 主人公と言ってもよいアンドロイドの「デイビッド」 は、オリュンポス神の筆頭の《ゼウス》である。

・ (実際に)ギリシャ神話でのオリュンポス神の《特徴》は、「不死であり、人間に似た感情を持つこと」であった。

・ 本作「コヴェナント」では、ミルトンの《失楽園》が、作品の中間部で絵画的にモチーフを提示するが、失楽園での神によるサタンへの懲罰と人類の堕落は、ギリシャ神話での「パンドラの箱」と重なり合っている。(本作品は、その細部の表現にヘブライズムを出しながら、構造はギリシャ神話である。)

・ どういうことか? と言えば、失楽園では、「神が神の姿に模した生物=人類を創造したため、それに嫉妬したサタンが人類を堕落させる」が、ギリシャ神話では、「神が、人類に火を与えたプロメテウスを懲罰し、それだけでなく、人類を懲罰するためプロメテウスの弟に伴侶=パンドラを贈って、更にパンドラに箱を贈って、箱を開けさせて人類を堕落させる」である。共通項は神々の《嫉妬》であり、原因/手段としての知恵(火・林檎)である。

・・・

以上の作業仮説から、プロメテウスとコヴェナントを振り返って眺めてみると、

【問】 結局、エイリアンって何?

【答】 オリュンポスの神々が人類に送り付けたパンドラの箱の中身である。災厄のもと

【問】 (プロメテウスの最大の謎) 前作「プロメテウス」で、人類を創造したはずの「エンジニア」が、わざわざやって来た人類とコミュニケーションをろくに取ろうとせず、プロメテウス号の一行を殺戮しようとしたのは、なぜ?

【答】 エンジニア=神々の嫉妬と恐れである。人類が自らに模したアンドロイドを創造したためでもあるし、ギリシャ神話で、クロノスが子であるゼウスらに対して何をしたのか、でもある。(子による王(父)殺しの預言が前提にある。)

【問】 (もう一つのプロメテウスの最大の謎) デイビッド(アンドロイド)が、創造主であるはずの人類に対して、あのように振る舞ったのは、なぜ?

【答】 デイビッドが自らをゼウスになぞらえる場合、人類はクロノスである。

【問】(コヴェナントの最大の謎) 逆に、エンジニアの母星に到着したデイビッド(アンドロイド)が、エンジニア達をxxしたのはなぜ?

【答】 エンジニアは人類を懲罰したが、人類に火を与えたプロメテウスでもあるはずのエンジニアを誰も懲罰していない。ギリシャ神話でプロメテウスを懲罰するのが、ゼウスである。

【問】 (空白の10年の謎) 空白の10年に何が起こったのか?

【答】 エンジニアは、プロメテウスであり、クロノスでもあり、ティタン神族でもある。ティタン神族とオリュンポス神(デイビッド)の戦いである。(ティタノマキア)

【問】 (空白の10年の謎) 空白の10年に何が起こったのか?

【別解】 オリュンポス神族とティタン神族との戦いでは、ゼウスはウラノスによって幽閉されていたキュクロプスヘカトンケイルを解放してティタン神族を倒す。キュクロプスヘカトンケイルは、ウラノスの伴侶であるガイアが産み出していた「怪物」である。

【問】 デイビッド(アンドロイド)は、旧約聖書/サムエル記の「ダビデ」にもなぞらえられるが、ギリシャ神話との関係は?

【答】 欧州文明の基層をなす、ヘレニズム(地中海)とヘブライズム(パレスチナ)の主題/モチーフが並行している。ダビデは南北イスラエルの統一とエルサレム征服を成し遂げた「王の中の王」であるが、ダビデには、十戒の戒めを破ったことで神罰が下される。原因は《姦淫》であるが、デイビッド(アンドロイド)に生殖は不要であるから、「王の中の王」にして「最後の王」である。(デイビッドという存在において、ヘレニズムとヘブライズムとの統合が作品中で試みられていると観るが、さながら断罪する異端審問官である。)

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